賃貸の退去時エアコンクリーニングは誰が払う?国交省原状回復ガイドラインの解釈(2026年9月23日)
国土交通省の原状回復ガイドラインでは、エアコンの内部洗浄は喫煙などの臭いが付着していない限り、賃貸人(貸主)負担とすることが妥当と考えられると公表されています。ただし契約書に特約があれば借主負担にもなり得ます。ガイドラインの公表例、通常損耗と借主の過失の線引き、トラブルになりやすい特約の要件、退去前の確認手順を一次情報だけで整理しました。
国土交通省の原状回復ガイドラインでは、エアコンの内部洗浄は「喫煙等の臭いなどが付着していない場合」、賃貸人(貸主)負担とすることが妥当と考えられています。退去時のクリーニング費用は、臭いや汚れの原因が普段の使い方にあるか、契約書に特約があるかで負担が分かれます。この記事では、ガイドラインの公表例と特約の要件、退去前にできる確認の手を、公表内容のまま整理します。
ガイドラインでのエアコン内部洗浄の扱い
エアコンの内部洗浄は、喫煙等による臭い等が付着していない限り「賃貸人負担とすることが妥当」と考えられています(平成23年8月の再改訂版、2026年9月23日取得)。出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)。
- 別表1(設備、その他・区分A)の考え方の原文は「喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えているので、賃貸人負担とすることが妥当と考えられる」です
- 巻末の「賃貸人・賃借人の修繕分担表」でも、貸主負担の欄に「エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)」が挙げられています
- 借主負担の欄には「タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)」「クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食」が挙げられています。クーラーの保守は所有者が実施すべきもので、水漏れを放置した場合は通常の使用による損耗を超えると考えられる、という考え方が添えられています
- 借主が自分で付けたエアコン(賃借人所有)の設置による壁のビス穴・跡は、貸主負担の欄に挙げられ、「その設置によって生じたビス穴等は通常の損耗と考えられる」と示されています。エアコンは一般的な生活に必需品になっている、という理由が添えられています
通常損耗と借主の過失の線引き
ガイドラインは損傷を「賃借人が通常の住まい方・使い方をしていても発生すると考えられるもの」と「使い方次第で発生したりしなかったりするもの」に分け、後者の代表例が手入れ不足による汚損とタバコのヤニです(再改訂版別表1、2026年9月23日取得)。出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)。
- 通常の住まい方で発生するものの公表例: 日照などの自然現象によるクロスの変色、画鋲やピンの穴(下地ボードの張替えが不要な程度)、網戸の張替え、機器の寿命による設備の故障
- 借主の使い方次第とされる公表例: 清掃・手入れを怠った結果の換気扇やコンロ回りの油汚れ、風呂・トイレ・洗面台の水垢とカビ、結露を放置して拡大したカビとシミ、飼育ペットによる柱等のキズと臭い
- 経過年数の考え方も公表されており、「経過年数が多いほど賃借人の負担割合が小さくなるようにする」ことが原則で、最終残存価値は1円とされています。参考として、冷房用・暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)の耐用年数は6年の例示が載っています
特約と、トラブルになりやすい条件
借主に特別の負担を課す特約には「①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること」「②賃借人が通常の原状回復義務を超えた義務を負うことを認識し、同意していること」「③賃借人が義務負担の意思表示をしていること」の3要件が示されています(再改訂版、2026年9月23日取得)。出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)。
- ガイドライン本文は、通常損耗や経年変化の修繕を借主に負担させるには「通常損耗補修特約が明確に合意されていることが必要」で、契約書面に明確に定めた上で説明と合意を得ることが大切だと説明しています
- 公表された裁判例では、通常損耗を借主負担とする特約が消費者契約法により無効とされた事例(京都地方裁判所判決 平成19年6月1日)があり、争点は「トイレ・キッチン・エアコン等の清掃費用」でした。判決は「トイレ・エアコン・キッチン等の清掃費用については、賃借人Xには通常の使用による損耗を原状回復する義務はない」としています
- 国土交通省の「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」のQ&Aは、「既に締結されている賃貸借契約に、支払う旨の規定や特約がある場合は支払わなければならないと考えられます」としています。契約書の記載があいまいな場合や請求内容に不明確な点がある場合は、ガイドラインを参考にするよう案内されています
退去前にできる確認の手
ガイドラインのQ&Aでは、入居時と退去時に貸主・借主双方が立ち会い、チェックリストを活用して写真を撮るなどして物件の状況を確認しておくことが「トラブルを避けるために大変有効な方法」とされています(再改訂版Q&A、2026年9月23日取得)。出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)。
- ガイドライン付属の入居時チェックリストには「エアコン」の有・無を記入する欄があり、入居時と退去時の両方で物件各箇所の状況を点検・確認する形式になっています
- 損耗の箇所や程度は、平面図に記入したり写真を撮るなどして残すことが重要とされ、チェックリスト等は後日トラブルが訴訟等に発展した場合の証拠資料になりうると公表されています
- 日ごろの手入れでは、ガイドラインが挙げる「通常の清掃」の範囲(ゴミの撤去、掃き掃除、拭き掃除、水回り、換気扇やレンジ回りの油汚れの除去等)を踏まえておくと、退去時の全体クリーニング費用の負担をめぐる話し合いで確認しやすくなります。フィルター掃除の頻度は、資源エネルギー庁の公表では月に1回か2回が目安です
よくある質問
Q. 賃貸の退去時のエアコンクリーニング費用は誰が払いますか?
ガイドラインでは、喫煙等の臭いが付着していない場合のエアコンの内部洗浄は貸主負担が妥当と考えられています。ただし契約書に有効な特約があれば借主負担になり得ますし、喫煙による臭いや手入れ不足の汚れは借主負担の例に挙げられています。
Q. 契約書に「退去時のクリーニング費用は借主負担」という特約があれば払う必要がありますか?
国土交通省の留意点ページのQ&Aは、支払う旨の規定や特約があれば支払わなければならないと考えられるとしています。一方でガイドラインは、借主に特別の負担を課す特約の3要件(必要性と暴利でないこと・認識と同意・意思表示)を示しており、通常損耗を借主負担とする特約が消費者契約法で無効とされた裁判例も公表されています。
Q. タバコの臭いがついたエアコンのクリーニングは借主負担になりますか?
ガイドラインの修繕分担表では、「タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)」は借主負担の欄に挙げられています。エアコンの内部洗浄が貸主負担とされるのは「喫煙等の臭いなどが付着していない場合」に限られるので、喫煙の有無が分かれ目になります。
Q. 高額な退去時の請求を避けるために何をしておけばいいですか?
入居時と退去時に双方が立ち会い、チェックリストと写真で物件の状況を確認しておくことがガイドラインで有効とされています。請求内容に不明確な点がある場合は、国土交通省の案内のとおりガイドラインを参考にする方法があります。
退去のタイミングに限らず、エアコン内部のカビや臭いが取れなくなったら、分解洗浄ができるエアコンクリーニング業者に相談する範囲です。料金の目安は「エアコンクリーニング料金ガイド」を参照してください。フィルター掃除の頻度と効果の公表値は「フィルター掃除は月1〜2回で年間約990円の節約」に整理しています。
出典: 国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版・平成23年8月、国土交通省住宅局)、同ガイドラインの掲載ページ、国土交通省「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」(いずれも2026年9月23日取得)。関連ページ: エアコンクリーニング料金ガイド。
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